万葉の里・真土峠

真土山(真土峠)

 『万葉集』の和歌のなかには、私たちの町五條市で詠まれたとされているものがたくさんあります。宇智の大野、浮田の杜、阿太、吉野川などの地名を読み取ることができます。さらに、『万葉集』には「亦打山」「信土山」の万葉仮名で、計8首の歌が詠まれていますが、この「まつちやま」は和歌山県橋本市と奈良県五條市の県境にあって、現在は「真土峠」という名でよばれています。五條市側は阪合部小校区です。(※上写真、左奥の窪んだところが現在の真土峠です。)
 万葉の時代にあっては、都のある大和(奈良県)に別れを告げて、いよいよ紀伊(和歌山県)へ足を踏み入れる郷愁や、長い旅や赴任先からやっと大和へ帰ってきた安堵感に誘われて、数々の歌が詠まれたものだと思われます。


飛び越え石

阪合部の万葉歌碑

 「真土」という地名は、現在、和歌山県橋本市に残り、万葉のふるさととしての町おこしも、橋本市側が熱心でたくさんの万葉歌碑が建っています。以下は、五條市側に建立された万葉歌碑の3首です。

@ あさもよし 紀伊へ行く君が 真土山 越ゆらむ今日ぞ 雨な降りそね(巻9-1680)
【意味】良質な麻の服を着て紀伊(現和歌山県)へ向かうあなたが、今日越えるはずの真土山で、雨に降られませんように(せっかくのよそいきの衣装が汚れませんように、そしてまっさらな気持ちでお仕事が出来ますように)。
※実際に真土山を越えるときによまれた歌です。

A 白栲に にほふ真土の 山川に 我が馬なづむ 家恋ふらしも(巻7-1192)
【意味】しろたえ(楮の皮で作られ白い光沢のある布)のように(日の光に照らされると)きらきらと美しい真土山や落合川だけれど、(私の夫の)馬が落合川を渡るのを嫌がって、早く家に帰りたいなぁと思わせてはいないかしら。
※真土山を越えるのならと、少し想像を入れながら作られています。

B あさもよし 紀伊人羨しも 真土山 行き来と見らむ 紀伊人羨しも(巻1-55)
【意味】紀伊の人は(良質で有名な)麻で作られた服を着て(朝日や夕焼けも美しい)真土山がいつも見られるって、いいなぁ、うらやましいなぁ。
※真土山をながめながらよんでいます。

万葉集:今残っている最も古い和歌集。全20巻。今から1200年以上前の奈良時代に、大伴家持(おおとものやかもち)がまとめた。
和 歌:五音・七音ごとにくぎってよむ、などいくつかのルールがある日本の古い詩。「漢詩(中国の古い詩)」に対していう。

@              A              B

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