ヒメタイコウチを守る活動

ヒメタイコウチとは

○ヒメタイコウチ:カメムシ目タイコウチ科
○体長(成虫):オス18〜19mm メス20〜22mm
○特徴:呼吸器が短く、水生昆虫でありながら水深が深いとおぼれてしまう。また、翅を持ちながら飛ぶことができない。(タイコウチは呼吸器が長く、飛ぶこともできるのが大きな違い。)
○生息地:湧水や伏流水がしみだす場所や湿地。昔は水田の用水路や河川の堤防脇など人里に環境でも見られた。
○分布:日本国内では東海地方(愛知・静岡)、近畿地方(滋賀・兵庫・奈良・和歌山)、四国地方(香川)。国外では、ロシア・中国・朝鮮半島と、日本海沿岸部に分布。

 
成虫                     卵

奈良県での発見・保護活動

 かつて大陸と日本列島が陸続きで日本海が湖だった頃、ヒメタイコウチはその湖沿岸に沿って分布していたとされています。翅を持っていても飛ぶことのできないヒメタイコウチは、移動の範囲が狭く分布は局所的となり、現在に至っているそうです。これまで、静岡・愛知・滋賀と兵庫で確認されていましたが、その間の奈良・大阪が空白地帯でした。今回、奈良・和歌山での発見によって、かつての帯状の分布域が浮かび上がってきたことに、研究者の喜びは大きいようです。

取り組み
2001(平13) 京奈和自動車道の建設に伴うアセスメント調査により、路線内から奈良県で初めてヒメタイコウチの生息が確認される。
2003(平15) この種の保護を検討するため、地域の自然観察者、昆虫研究者、環境再生の専門家などからなる保全対策協議会が設けられた。
2004(平16) 道路建設の計画に合わせて、生息地が消える前にできる限り多くの個体を採集し、飼育が開始される。
2006(平18) もとの生息地に替わる代替地を選定し、湿地ビオトープを整備する。
2007(平19) 第1回目のヒメタイコウチの放虫が行われる。
2008(平20) ヒメタイコウチを守る会が発足する。
2009(平21) 阪合部小学校で、最初のヒメタイコウチのセミナーが開かれ、児童たちが飼育した個体を含めてビオトープに放虫する。
2010(平22) 奈良県の「特定希少野生動物」に指定される。
※奈良県版レッドデータブックで絶滅寸前種に選定された290種のうち、さらに危惧度の高い12種。

阪合部小学校での保護活動

 2009(平成21)年の第1回放虫会以降、毎年、5年生がヒメタイコウチの飼育・放虫を通して環境学習に取り組んでいます。

活動内容
5月 ヒメタイコウチの学習会
 ○講師:窪田敏氏(五條のヒメタイコウチを守る会会長)
 ○場所:5年生教室
5〜6月 ヒメタイコウチの飼育
 ○窪田氏から預かった成虫に産卵させ、卵を孵化させる
 ○幼虫へのえさやり・水替え(えさは校庭内のダンゴムシ)
 ○5回脱皮して成虫となる
7月 ヒメタイコウチの放虫
 ○湿地ビオトープでの観察会(植生・餌昆虫・ヒメタイコウチなど)
 ○昆虫研究者による説明会(ヒメタイコウチの生息環境)
 ○飼育したヒメタイコウチの放虫

 

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